Happy Birthday Jimmy!
「お疲れー」
背後から、いかにもかったるそうな声が聞こえた。
「ソレ、北海道産小豆だけに、あんこがほかのよりバツグンに美味いよな。
俺も大概喰ったけど、おんなじヤツばっかで飽きねーの?」
指さされたコンビニ籠は、今日も今日とて、同じあんぱんで溢れかえっていた。
言われるまでもない。
買う前から、胸焼けするほど飽きている。
正直、もうたくさんだ。
けれど、
「張り込みのときは、いつもコイツに決めてます。
縁起担ぎみたいなのと、片手で喰えますからね」
連日連夜の疲れのせいか、口が滑った。
事実、そのまんま。
張り込み対象の暇人、もとい、元攘夷志士 「白夜叉」 にバラしてどうする?
とっさにイイワケを考えようとした矢先、
「あー、分かる分かる!
上司がアレだ!
毎日毎日、さぞかし苦労してるんじゃね?
何、ジミー君、こんな夜遅く、マヨ侍にパシリまでさせられてんの?」
旦那は、あんぱんの底に埋もれていたマヨネーズを目ざとく見つけ、
「売り切れでした、って言ってやれ!」
ニヤッと笑って、棚に戻した。
「殴られますよ!」
慌ててマヨネーズに伸ばした俺の手を握り、
「それが嫌なら、物は相談。
転職って、奥の手はどうよ?
ウチなら、もれなく1階にタマがついてんぜ?
ババアもバケモノもいるけどな」
「…………」
「で、タマだけに、たまーに万事屋の掃除に来たり、しょっちゅう家賃の取り立てに来る。
家賃を払うっつったら、いつだって、二人っきりで、じかに手渡し。
な?
条件としては、野郎だらけでむさくるしい屯所より、なんぼかましなんじゃね?」
「で、給料はナシ。
家賃は、全額俺持ちなんでしょう?
おおかた食費も、食事当番も俺だったりして?
おまけに、万事屋の仕事のほうも、俺が行くことになるんでしょう?」
「へぇ…?
よく分かってんじゃねーの。
マヨ侍に、人一倍、可愛がられてるだけのことはあんだな?」
「……旦那、俺の話、聞いてないでしょ?」
「んー?」
しつこくマヨネーズを取り上げようとする万事屋の旦那を睨んだ。
「コイツを買って帰らないと、拳骨でぶん殴られるんすよ!」
「たかがマヨネーズで、ふざけんな!
パワハラで訴えろ!」
「屯所で、そんな常識が通るワケないでしょうが!
よく知ってるくせに、無茶言わないでくださいよ!」
「大丈夫だって、今夜は別!」
と、旦那は、マヨネーズを力ずくで棚に戻した。
レジに立つ顔見知りの店員の迷惑そうな視線が、横っ面に突き刺さる気がした。
ここで旦那と揉みあっても、埒があかない。
二度手間だけれど、いったん別れて、出直したほうが良さそうだ。
どういう風の吹き回しか、俺にはまるで分からない。
が、張り込みに使う部屋に副長が来ているだけに、マヨネーズは必需品。
店屋物の丼にかけるのに使うからと部屋を追い出された以上、買わずには帰れない。
ここはこらえて、と大人の判断をしたはずが、
「万事屋の旦那に妨害された、と伝えます」
口をついたのは、まるで違う言葉だった。
聞いた瞬間、万事屋の旦那の顔に浮かんだのは、この世のものと思えない腹黒い笑み。
屯所1の悪魔、沖田隊長といい勝負のドSならではの表情に、背筋を寒気が走った。
どんな目に遭わされるか…。
ダメだ。
俺は、監察失格だ。
無言であんぱんの籠を取り上げ、棚に戻していく旦那の背を眺めつつ、俺は思った。
「はい、本日の業務終了!」
すべて戻し終えた旦那は、カラの籠をほがらかに俺に手渡し、なぜか外を指さした。
コンビニのガラス戸の外に見えたのは、白い煙をモクモク上げる後姿…。
部屋にいるはずの副長だ。
「なんで…?」
思わず首を捻ったら、
「ジミー君、昨日が誕生日だったんだ?
マヨネーズの食いすぎで、思い出すのが遅れたんじゃねぇの?
野郎、いましがた、万事屋に電話してきやがった。
一緒に呑みに行かねーか、ってさ」
ニッと笑って、旦那が言った。
「さて!
ジミー君、いい機会じゃねーか!
へそ曲がりのマヨ侍に、平素の罪滅ぼし、存分にさせてやれ!
誕生祝いにかこつけて、副長のおごりで大宴会!
…っと、その前に」
万事屋の旦那が、俺の前にコンビニ袋を差し出した。
「おめでとう、ジミー君!
コイツが、春のオススメだ!」
袋の中を覗いたら、今期限定のあんぱんが、1コだけ入っていた…。
end.* presented by‖宮城 @ 徒花‖
\ 祝*山崎2013退誕 / に寄せてぃただきました〜* ス〜パ〜スペシャルサプラィズ!
右上リンクからも ぉ訪ねぃただけば瞭然ですが、JOYメィンで Cool な作品を紡がれる、
宮城さまのジミ〜譚 … ! どんだけスゴィかって薩長同盟←ソレを云ってイィのか?切腹モンぢゃ?
だけど〜っ! ソンくらぃスゴィ!* キセキ〜ッ * と我思ふぅ〜っ ∴ 我有難ふぅ〜っ!